2010年4月24日土曜日

シッダールタ-5

『「シッダールタ」は、成就したもの(シッドハ)と、
目的(アールトハ)との結びついたことばによっているが、
涅槃に入った仏陀の教えを説いたり、成道を賛美したりするのではなく、
あくまでヘッセ自身の宗教的体験の告白である。』
(「シッダールタ」の解説より)

訳者の高橋先生によれば
ヘッセは第一部を短期間で書き上げたものの
第二部には入るとぴたっと筆が止まってしまったとのことです。

「解脱したシッダールタを描くまでに
ヘッセの体験が熟していなかったからであろう。」(同書)
ということらしいのですが、
それはヘッセ自身も次の様に語っています。

「いつもよりもきびしく、
自分の生活しなかったことを書くのは無意味だという経験をした。」

それで前号でもご紹介したように「瑜伽の行」にいそしんだそうです。

ですので、かなりのリアリティを持った作品に仕上がっているわけですが
この作品でヘッセが語る「悟りの世界」は、
いわゆるヨーガで到達できるレベルではないと思います。

むしろヨーガの限界を意識した上で、
その彼方に位置する領域までを見据えているような気がしてなりません。
それは今回の連載の冒頭に書いたように
『すでにして彼は、自己の本性の内部に、
破壊しがたく、宇宙と一体なるアートマン(真我)を知ることができた。』
という記述からも推しはかることができます。