2010年6月15日火曜日

輪廻転生思想

生れ変りを説く輪廻転生思想は
古代インドからのものだと誤解されている方々が少なくありません。
実際には、BC600年前後に突然ウパニシャッドに登場したわけで
それ以前には、私の調べた限り、世界中に存在していません。

アーリア人がインドに侵入したのはBC1500年頃で
リグ・ヴェーダが成立したのはBC1200~1000年とされています。
BC1000年頃には他の三種類のヴェーダが成立しますが
これらのヴェーダには輪廻転生思想についての記述は全くありません。
なぜならインドの土着民族そして侵入者たるアーリア民族のいずれにも
輪廻転生の思想がなかったからです。

ではいつ頃から言われ始めたのかというと、文献的には
BC7~6世紀頃に編纂されたチャーンドーギヤ・ウパニシャッドに
5火2道説として登場するのが初出なのです。
それでも現在言われているような内容とはかなり趣が異なりますが。
ただ興味深いのは、この輪廻転生思想が
宗教を本職とする専門家集団であるバラモン階級から出たものではなく
王族や軍人たちの支配的権力階層から言われ始めた点です。

拙著「ヨーガの極意」に詳解していますが、私はこの輪廻転生思想を
当時の強圧的な階級制度と関連付けて考えています。

ところで、一般に知られるカーストという言い方は
後世のもので当時はヴァルナという語を使っていました。
このヴァルナの語源は「色」であり、
実際に肌の色で人種差別していたといわれています。
かつての南アのアパルトヘイトがイメージされますが
たぶんそれと似通った人種隔離政策だったのでしょう。

このような社会制度は応々にして革命を生むのが歴史のならいですが
それを押さえ込む為に支配的権力階層は画期的な対応策を発明しました。
私はそれが輪廻転生思想だったのだと考えています。

自らのカーストの本分を全うすることで来世によりよい階級へと生れ変る、
という思想を宗教理論の中に組み込み
それを従来の信仰に上手にリンクさせることで
階級制度に不満を持つ人々の革命意識を押さえ込もうとしたわけです。

世俗離れしたバラモン階級の僧侶たちには
あまり危機感がなかったかもしれませんが
財産と権力を有する王族や軍人達の支配的権力階級にとっては
自らの支配構造を維持する為に、
このような思想は極めて有効なシステムに思えたはずです。

そしてその宗教化されたシステムは凡そ2600年間続き
現在のインド社会に於いても、根強い効力を維持しています。

ラーマナ・マハーリシ師は
「輪廻転生は真実でしょうか?」という質問に対して
次のように答えています。

『無知が存在するかぎり、輪廻転生は存在する。
本当は、輪廻転生などまったく存在しない。
いまも、いままでも、そしてこれからも。
これが真理である。』
「あるがままに」ナチュラルスピリット

実に明快な答えです。
輪廻転生とは無知がもたらす産物なのです。
ですから
このような輪廻転生思想にとらわれる必要などないのです。