2010年6月6日日曜日

ギータンジャリ

『あなたが私に『歌え』とお命じになると
わたしの胸は いつも 誇らしさではりさけんばかり。

そんなとき、あなたのお顔を仰ぎ見ると、
わたしの目に 涙がこみあげる。

わたしの命のなかの耳ざわりな不協和音は
ことごとく ひとつの甘い調べに融け
わたしのあなたへの敬慕は 
嬉々として海原を渡り翔ぶ渡り鳥のように 翼をひろげる。
わたしは知っている
わたしが歌えば、あなたが嘉してくださるのを。

わたしは知っている
歌人としてのみ、わたしはあなたの御前に出られるのを。

遠くひろげた わたしの歌の翼の先端で、わたしは 
届こうとなど夢にも願わなかった あなたの御足に触れる。

歌う歓びに酔いしれて、つい我を忘れ、わたしは 
わが主たるあなたをしたしげに「友」と呼んでしまう。』
「ギータンジャリ」、タゴール著作集(第3文明社)
インドの詩聖タゴール(1861~1941)
インドの近代化を促すとともに、東西文化の融合に努めました。
1914年に詩集「ギータンジャリ」で東洋人として初めてノーベル文学賞を受賞。
彼は哲学者デベーンドラナート・タゴールの息子として
カルカッタに生まれました。
子供のころから詩を書き始め、17歳の時に処女作を出版。
法律を学ぶためイギリスに留学し、
帰国後、それまでに書き溜めた詩、短編、小説、戯曲を発表して、
植民地時代の代表的作家となりました。
彼の作曲した数百の歌はひろく一般に親しまれ、
1929年からは絵画など、広い分野で才能を発揮しました。