2011年5月10日火曜日

方丈記

 
1月27日に『方丈記』鴨長明について書きました。
   
「天変地異と、飢饉による無数の餓死者
大自然の猛威に対して無力な人間の儚さ。
   
彼の生きた時代がどのような時代だったか。
それを知ってから、方丈記を読むと
彼の心情が伝わってきます。」
 
実は、同書に次のような文章があります。
「恐れの中に恐るべかりけるは、ただなゐ(地震)なりけり」
 
古語では、地震のことをナイフルといいます。
ナイとは大地をさしますので、それが「振る」状態を地震と表現したわけです。
参考・・「日本書記」武烈天皇の影姫歌謡に「地(なゐ)が振りまじ」。
 
 
そして長明は、
前記の引用の前に次のように書いています。
 
「また同じころかとよ。
おびたたしく大地震ふること侍りき。
そのさま、よのつねならず。
山はくづれて、河を埋み、海は傾きて、陸地をひたせり。
厳割れて、谷にまろび入る。
なぎさ漕ぐ船は波にただよひ、道行く馬は足のたちどをまどはす。
都のほとりには、在在所所、堂舎塔廟、一つとして全からず。
或はくづれ、或いはたふれぬ。
塵灰立ちのぼりて、盛りなる煙の如し。
地の動き、家のやぶるる音、雷にことならず。
家の内にをれば、たちまちにひしげなんとす。
走り出づれば、地割れ裂く。
羽なければ空をも飛ぶべからず。」
 新潮日本古典集成『方丈記・発心集(三木紀人校注)』より
 
彼が生きていた鎌倉幕府開府直前の1185年7月9日に
大地震が発生していますので、それについての描写なのですが
それにしても実にリアルで、臨場感があります。
人間はいつの世も、
大自然がもたらす禍と恵をともに受け止めて生きてきたのです。